大企業を辞めて精神保健福祉士になりました。

大企業を辞めて精神保健福祉士になりました。

社長表彰までされた大きな会社を10年の節目で辞めて精神保健福祉士になりました。『細く長く働く』がモットーです。

【元営業が語る】ソーシャルワークにマーケティングを生かす方法【事例紹介】

この記事の内容をざっくりと

 

 

 

医療・福祉で働くソーシャルワーカーにはマーケティングスキルは必要か?

 

f:id:lock2059:20191124200618j:plain

 

ソーシャルワークとは端的に申し上げますと、

社会や個人の課題や様々な構造に対して、普遍的な方法をもって働きかける実践のことを意味しており、より具体的には、

  • 狭義:利用者さんの自己実現のために関係機関と交渉し、理想的な環境を創出する活動
  • 広義:地域、ひいては世の中の社会資源やシステムに対し、主に社会的弱者の方の福祉を目的とし、理想的な形へと変革する活動

他にも様々な意味があるとは思いますが、医療・福祉の現場で精神保健福祉士としてソーシャルワークに携わる筆者はこのように捉えています。

 

そして、上述の『利用者さんの理想的な環境』『地域の社会資源の理想的な変革』を創出するためには然るべき相手への交渉が必要であり、プレゼンテーションを実施し、必要性をご理解頂き、同時に相手への動機づけを行う必要があります。

ここで筆者が10年間営業職として培った『マーケティングスキル』が役立っており、振り返ればこの技術がなければ成しえなかった仕事も多々あるように思えます。

 

以上のことから、医療・福祉で働くソーシャルワーカーの方はマーケティングスキルを養うことをお勧め致します。

 

なければソーシャルワークが出来ないことはないですが、あったほうがより良い仕事が出来るものと考え、当記事では事例を踏まえ、ソーシャルワークマーケティングを生かす方法についてご紹介をしていきたいと思います。

 

 

 

 そもそもマーケティングとは何か?

 

f:id:lock2059:20200520152829j:plain

 

参考までに一応説明を致します。

 

マーケティングとは、分かりやすく申し上げますと、

顧客がサービスの価値を最大限得られるように、

  1. サービスの企画(何がしたいか?)
  2. 市場分析(何が課題か?)
  3. 営業(誰にどのように宣伝するか?→ターゲティングとプロモーション)

他にも多々ありますが、代表的には以上の3点を行うプロセスのことを言います。

 

少なくとも医療・福祉にマーケティングを生かすという観点では、経験上この3点を意識することで十分であるものと考えます。

 

そして、人によっては『市場分析』のことだけを意味してマーケティングと呼びますが、正確には企画から宣伝にかけた広い範囲の活動のことを意味します。

 

当記事では、どのようにソーシャルワークマーケティングを生かしていくのかについて、事例を上述の①②③のプロセスに着目しながらご紹介していきます。

 

 

 

①地域に足りない資源を増やすことに成功した事例

 

f:id:lock2059:20191127131456j:plain

 

自身が従事する地域で、

  • グループホームが全然ない・・・」
  • 「就労移行がないから遠方を紹介しなければいけない」

その他諸々・・・

 

特にいわゆる田舎で従事されているソーシャルワーカーさんはこのような悩みを持つ方が多いのではないでしょうか?

 

そして、我々以上に困っているのが利用者さんであり、「仕方ない」で済ませずこのような状況を打破するために活動を行うのがソーシャルワーカーです!

 

かく言う筆者が従事する地域では、上述のグループホームが足りず希望する方がいてもいつ入れるかの目途がたたなかったり、就労移行支援事業所も同じく数が足りず、やむなく遠方の事業所に繋がざるを得ないという状況でした。

 

この状況を打破すべく、これらの資源を増やすすために動くことを私は決めました。

これはある意味サービスの企画(何がしたいか?)であると言えます。

 

そして、市場分析(何が課題か?)として、市の障がい福祉計画を閲覧し、人口やその割合が似ている地域と比較して上述の業態の事業所が少ないことを改めて確認し、各相談支援事業所や市の福祉担当に確認をして、入所施設の順番待ちの状況、就労移行に関しては他地域の施設に通われている方のおおよその状況を確認し、自身が日々感じている問題がデータの上でも課題となっていることを確認しました。

(※個人情報には配慮しています)

  

以上の情報を持ち、然るべき相手に営業(誰にどのように宣伝するか?)をするわけですが、『誰に営業するか?』という、いわゆる『ターゲティング』の部分が当事例の肝であったと考えます。

 

  1. 色々な事業を手掛ける地元の社会福祉法人
  2. 同じく色々な事業を手掛ける他の地域の法人
  3. 入所施設を多角展開する法人
  4. 最近福祉に参入してきた、元々は他業種を手掛けていた法人

 

このような施設をターゲットとしました。

 

なぜかと言うと、新規事業所を立ち上げるノウハウや金銭的な体力を持った法人でなければ施設の立ち上げに二の足を踏むと考えたからです。

 

これらの施設に対ししっかりとアポを取り、聞く耳を持って頂いたうえで市場分析を基に、「地域特性を見て必要性が高いこと」に加え、「需要過多であるため利益が得られる可能性が高い」ことをプレゼンテーションしました。

 

結果として、上述の①と④の2つの法人に響いたようで、その後グループホーム(サテライトタイプ)が数件と、就労移行支援事業所が新規に立ち上げられ、多少は地域課題も緩和されたように感じます。

 

もちろん、この過程で筆者だけの力ではなく様々な方にご尽力を頂きましたが、いいのか悪いのかは別として、

  • 『利益が得られる可能性』をデータを基に伝えたこと
  • そのための市場分析
  • 営業、特に『誰にどのように宣伝すべきか?』という『ターゲティング』

これらに関しては営業職として培ったスキルが生かされたものと考えます。

 

ご参考までにご紹介をさせて頂きました。

 

②プロジェクトに一工夫加え、成果を上げることが出来た事例

 

f:id:lock2059:20191127135906j:plain

 

ご存じの通り、精神障害者の方々の地域移行を進めるための地域作りが進められており、「精神障害にも対応した地域包括ケアシステム」の構築が厚労省の検討会で理念として掲げられています。

 

これに伴い、皆様の地域でも地域移行のための取り組みをされていると思いますが、地域の支援者と精神科病院との間に意識の隔たりがあるのではないでしょうか?

 

かく言う筆者が従事する地域もそうでした。

 

地域移行に関するプロジェクト会議や勉強会を行っており、地域だけでなく病院からも看護師やワーカーやOTをメンバーに含めて運営がされておりましたが、

  • 病院関係者にあまり興味を持ってもらえない
  • なので何回やっても議論が全く深まっていかない
  • そもそも全く参加してもらえない方がほとんど・・・

このように散々な状況で、挙句の果てに地域の支援者もこれに怒ってしまい参加者がほぼ集まらないような状況へと陥ってしまったため、「これはどうにかしないといけない」と考え、動くことにしました。

 

本件に関して、あくまで目的は入院患者さんの地域移行の推進であり、「どのように会議に参加してもらうか?」ではなく、「どのように病院関係者に地域移行の重要性を感じてもらうか?」ということを軸に考え対策を練っていくこととしました。

①サービスの企画(何がしたいか?)

 

まず、②何が課題か?を突き止めるために、病院から比較的よく参加していただいていたワーカーさんに、「なぜ参加しないのか?」をプロジェクトメンバーの皆様に聞いて頂くこととしました。

 

結果としては、ワーカーとOTは、興味はあるものの、流動的な業務の関係上中々参加が難しいという方が少数。興味がないという方が多数。看護師に至っては興味がないどころか、そもそも自分がメンバーであることを知らない方が多数いたということでした(笑)

 

つまり課題は、そもそも会議や勉強会をするための土台さえもないことだということです。

 

さて、ここで再び①サービスの企画(何がしたいか?)に戻ります。

 

つまり、本件における「どのように病院関係者に地域移行の重要性を感じてもらうか?」ということですが、土台がない状況では勉強会・会議を工夫したり、その案内の方法を変えるといった生易しいものでは何も変わりません。

 

病院関係者の方に地域移行について聞いて頂ける、強制力を持った場を設定しなければ変わらないと考え、このために院内の研修として採用頂くことを考えました。

 

さて、これを誰に(ターゲティング)、どのように伝えるか?(プロモーション)

つまり③営業の段階ですが、

  • 誰に伝えるか→各メンバーの所属上長
  • どう伝えるか?→所属上長に打ち合わせとして一堂に会して頂き、「貴院に地域移行の推進に協力を頂きたいが、勤務の都合上病院スタッフの会議参加が難しいと聞いている。可能であれば院内研修の枠を少し頂き、お話をさせて頂けないか?」という内容で相談を持ちかける。

このような形で営業をかけることとしました。

 

この営業方法として、『一堂に会して頂いた』ことがポイントです。

 

どういうことかと言うと、所属上長一人ずつに当たると「検討してみます」で間違いなく終わり、おそらく「面倒臭い」と思われその後音沙汰なしになるでしょう。

そもそも重要だと認識頂けていたら、きっちり会議に参加して頂けるはずですから。

 

このような状況を防ぐために、一堂に会して頂くことで半強制的にディスカッションを巻き起こすことを考えました。

管理職が一堂に会して、誰も何も言わずに終わることなんてまず有り得ませんので。

 

この目論見があたり、たまたま御一方強烈に賛同してくださる方がいたことも味方して、その場で議論が起こり、院内研修でネタに困っていた枠をいくつか頂くことが出来ました。

 

その後、その枠を地域移行を題材に運用しており、それをきっかけに定期的に行う勉強会への病院スタッフの参加が徐々にではありますが増えてきております。

 

以上、元あるものにひと工夫加え、成果をアップさせることが出来た事例をご紹介させて頂きました。

 

まとめ

 

f:id:lock2059:20191130122018j:plain

 

ソーシャルワークとは、社会や個人の課題や様々な構造に対して、普遍的な方法をもって働きかける実践です。

 

そして、課題を解決したり構造を変革するためには、マーケティングのスキルがあった方がより成功率が上がるものと筆者は考えており、この観点から、当記事ではマーケティングの能力を生かしたソーシャルワークの事例を二点、参考までにご紹介させて頂きました。

 

  1. サービスの企画(何がしたいか?)
  2. 市場分析(何が課題か?)
  3. 営業(誰にどのように宣伝するか?→ターゲティングとプロモーション)

このマーケティングの3つのプロセスを意識してソーシャルワークを行ってみてください。

 

少しでも皆様の参考になりましたら幸いです。

 

では!